はじめに
生成AIの台頭により、ボタンやリンクといったGUI中心の設計から、言葉によるインタラクション=対話UIの重要性が増しています。ユーザーはもはや「クリックする」のではなく、「話しかける」「相談する」「指示する」ようになり、UXデザイナーは“会話そのもの”をUIとして設計する力が求められるようになってきています。
このような対話型UIにおいて重要になるのが、「情報設計」です。
- どんなトーンで話すべきか?
- 選択肢は提示すべきか?
- 会話が脱線したらどう誘導するか?
この記事では、対話UIの3つの観点(トーン/選択肢/脱線)に焦点を当て、UXデザインの実践ポイントを解説します。
言葉のトーン設計:人格と安心感の鍵
なぜトーンが重要か?
AIとのやりとりは“人との会話”に近いため、言葉の雰囲気がそのまま信頼感・親しみやすさ・安心感に直結します。
| トーン | 想定シーン | 設計のヒント |
|---|---|---|
| 丁寧・フォーマル | ビジネス、社内手続き | 「〜いたします」「ご確認ください」など、敬語ベース |
| カジュアル | 個人ユース、アイデア支援 | 「〜だね」「OK、やってみよう」など、フレンドリーな語調 |
| 中立・控えめ | 判断を避けたい場面 | 「〜の可能性があります」「〜かもしれません」など中間表現 |
| 共感・傾聴系 | メンタルケア、相談窓口 | 「お気持ち、わかります」「大丈夫ですよ」など共感ワード |
設計Tips:
- AIの人格(ペルソナ)を先に設計し、それに合わせてトーンを統一
- トーンをUI内でユーザーが選べるようにするのも有効(例:「ビジネス/カジュアル」切り替え)
選択肢の提示:対話を“導く”UIの役割
なぜ選択肢が必要か?
AIとの自由対話は便利ですが、入力のハードルが高い/ユーザーが迷子になるといった課題もあります。そこで、対話中に選択肢を提示することで、自然な誘導と学習支援が可能になります。
選択肢設計のパターン
| タイプ | 用途 | 実例 |
|---|---|---|
| Yes/No選択 | 明確な意思確認 | 「この内容でよろしいですか?」 |
| 分岐選択 | ユースケース誘導 | 「見積を作成」「契約書のテンプレート」など |
| トーン・形式の選択 | 出力内容のカスタマイズ | 「カジュアル」「ビジネス」「PDF形式」など |
| エラー時の選択肢 | リカバリー支援 | 「もう一度試す」「別の方法を聞く」 |
設計Tips:
- 初回利用時は選択肢中心、慣れたら自由入力に切り替える構成が有効
- 選択肢の文言は、ユーザーが「自分の言いたいことを代弁された」と感じる言葉にする
脱線対策:AIの“寄り道”をUXで導く
なぜ脱線が起こるのか?
生成AIは柔軟に返答できる反面、本来の目的から逸れてしまう(=脱線)ことも多々あります。
例:「契約書のテンプレートを出して」と言ったのに、世間話に流れたり、雑談が続いたりする。
脱線対策のアプローチ
| 方法 | 解説 | 実装例 |
|---|---|---|
| ゴールの明示 | 現在の目的をUI上で明確に | 「現在:契約書作成中」ステータスを表示 |
| 会話メモリの制御 | コンテキストの範囲を絞る | 特定の流れではFAQ回答だけを許可する |
| 戻る/やり直す機能 | ユーザーが軌道修正できるように | 「前のステップに戻る」「最初からやり直す」ボタン |
| 定期的なリマインド | ゴールへの再誘導 | 「この後、どうしますか?」「次に進めましょうか?」 |
設計Tips:
- 会話が長くなるほど「何をしていたか」を可視化する要素が重要
- 脱線も許容しながら、ユーザーの意図を“やんわりと”戻せるトーンで誘導する
おわりに(まとめ)
対話UIは、ユーザーとAIの“会話体験”そのものがUXになります。ボタンやフォームではなく、語調・選択肢・流れの設計こそがユーザー体験を左右する時代です。
UXデザイナーに求められるのは、以下の3つ:
- 語調・トーンの一貫性=AIの“人格”としての安心感
- 選択肢によるインタラクションのガイド=ユーザー学習の支援
- 脱線や混乱に対する回復構造=安心して任せられる体験設計
言ってしまえば、会話UIは「見えないUI」であり、言葉の一つひとつに「設計の意図」が宿ることになります。


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