はじめに
ChatGPTは「入口」に過ぎません。実務に適した生成AIを選び、どうデザインに落とし込むかがデザイナーの腕の見せどころです。
生成AIといえばChatGPTの名前が浸透していますが、実はそれだけではありません。私たちが業務自動化のためにAIを導入しようとするとき、用途・要件に応じて適切なモデルを選ぶことが、体験の質を左右します。
この記事では、UXデザイナーの立場から「業務自動化において実際に使える生成AIの選択肢とその特徴」について述べています。エンジニアに“任せっきり”ではなく、設計段階から建設的な会話ができるようになるための基礎知識を身につけることが目的です。
そもそも生成AIとは?
生成AI(Generative AI)とは、テキストや画像、音声などのコンテンツを自動で生成できるAI技術の総称です。中でも、自然言語で出力を返すテキスト生成系が、業務自動化の領域でよく活用されます。
私たちが扱うのは、その中でも「LLM(大規模言語モデル)」と呼ばれるカテゴリ。これらのモデルは大量のデータから学習されており、ユーザーの入力(プロンプト)に対して適切な言葉や判断を返すことができます。
ただし、モデルによって特性が異なり、同じプロンプトでも出力の傾向や強みが変わる点に注意が必要です。
業務自動化に使える主要な生成AIモデルたち
ここでは、実際に私たちが業務で使用・検討する代表的なモデルを紹介します。併せてそれぞれの特徴と、UX視点での注目ポイントも添えています。
ChatGPT(OpenAI / GPT-4, GPT-4o)
- 特徴:バランスが取れた性能。論理的思考・長文出力に強く、安定性が高い。
- 用途例:顧客対応、業務マニュアルの要約、カスタマー対応ログの整理。
- UX視点での注目点:誤答が比較的少ないため、信頼感重視の領域に向いている。特に「人格設定」や「トーン設計」との相性も良く、エージェント開発に最適。
Claude(Anthropic / Claude 3系)
- 特徴:長文処理・構造化出力に優れる。対話の「意図読み取り」も得意。
- 用途例:法務・契約書チェック、議事録の要点整理、リサーチの下書き生成。
- UX視点での注目点:人間らしさと礼儀正しさを感じやすい出力が多い。ユーザーとの対話における“気配り感”を演出するならClaudeが活きる。
Gemini(Google)
- 特徴:Google製ツールとの親和性が高い。リアルタイムの情報検索が強み。
- 用途例:ナレッジベース検索、Google Workspace連携でのドキュメント生成。
- UX視点での注目点:検索性+文脈処理のバランスに優れ、ナレッジ支援系のUX設計にマッチ。Google環境での実装に有利。
Mistral / LLaMA(オープンソース系)
- 特徴:自社サーバでの利用が可能なオープン系。カスタマイズ性が高い。
- 用途例:機密性が高い業務自動化、オンプレミス環境でのプロセス実行。
- UX視点での注目点:透明性・制御性を高く保てるため、セキュアな業務設計やRAGとの連携に適している。
モデル選定のUX的視点:どこに注目すべきか?
デザイナーが「モデルの選定」に関われるとき、ただ機能を比較するだけでなく、「ユーザー体験として、何を実現したいか?」という視点で選ぶことが大切です。
以下は、私が意識している選定基準の例です。
体験観点 | 視点 | モデル例 |
---|---|---|
信頼感 | 正確性・トーンの安定性 | GPT-4、Claude |
スピード | 反応速度・軽快さ | GPT-3.5、Gemini |
人間らしさ | 言葉遣い、気配り感 | Claude |
カスタマイズ性 | 自社ドメインとの親和性 | Mistral、LLaMA |
外部連携 | 他ツールとの接続性 | Gemini、GPT+API連携 |
UX設計では、「ツールに詳しくなくても自然に使える」ことが重要。AIの違いをユーザーが“感じないで済む”ように裏側で調整するのも、デザインの一部だと私は思っています。
デザイナーとしての関わり方と、これからの選択肢
デザイナーが生成AIの「中身」にまで関わるのは、かつては考えられなかったかもしれません。でも今や、「どのAIを選ぶか」は、体験のクオリティやブランドの印象そのものに直結します。
AIの使い分けは、単なる性能の差ではなく「体験の設計」の選択肢です。
たとえば:
- 「カジュアルに返してくれる」接客AIにはClaude。
- 「正確な回答を一発で返す」にはGPT-4。
- 「複雑な業務フローに連携させる」にはオープンモデル+RAG構成。
プロダクトの目的やユーザー像に応じて、AIをUXの一部としてデザインに取り込む時代が本格的に始まっています。
おわりに(まとめ)
生成AIは、ただ「すごい」だけの存在ではありません。
どのAIを選び、どのように振る舞わせるかをデザインすることこそが、これからのUXの核心です。
ChatGPTだけでなく、Claude、Gemini、LLaMA……
それぞれの特性を理解し、体験設計の道具箱に加えていくことが、AI時代のデザイナーに求められる視点です。
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