静かなリーダーシップの実践

前回の投稿で「問題解決型デザイナー」についてのあり方について書いたが、もう少し自身のデザイナー観に踏み込んでみたいと思う。

デザイナーでなくとも働く者であれば誰しもどこかのタイミングで「プレイヤーとして続けるべきか」「マネジメントに進むか」という選択肢に出会うことになる。私はどちらかというと前者で、自身がマネジメントが向いているとは思っていない人間だ。ただ、マネジメントをしたくないからダメだ、というようなことはないと思っている。

「プレイヤーとしての立場を保ちながらも、チーム全体に良い影響を与えたい」と考えるスタンスは、これからの時代にとても重要だと思う。リーダーシップとは必ずしも前に出ることではなく、支える・導く・仕組みを整えることも立派なリーダーシップの形だと思うのである。

1. 「シニア・スペシャリスト型」のキャリアを築く

マネージャーではなく、「スペシャリスト」としてチームやプロジェクトに深く貢献する立場。

  • 現場の第一線で手を動かしながら、周囲のクオリティ向上を牽引
  • 若手デザイナーのメンターや技術的リファレンスとして存在感を持つ
  • UX品質やプロセスの整備に貢献し、チームの土台を強くする

これは「支えることでチーム全体を底上げする」形のリーダーシップである。

2. 「仕組みで支える」視点を持つ

直接リードしなくても、プロセスや仕組みを通じてチームに良い影響を与えることができる。

  • デザインガイドライン、コンポーネントライブラリの整備
  • UXレビューやナレッジ共有会の企画運営
  • プロジェクトの振り返り文化の導入
  • チームのワークフローの改善提案(Notion・Figma・Slackなどの活用法の最適化)

こうした仕組みづくりは、リーダーシップの裏側で重要な貢献であり、私の「サポート力」や「考える力」が活きる部分である。

3. 「チーム変革のサポーター」になる

「変革」に関心があるのなら、自分が前に立つのではなく、変革の実行者を支える補佐的立場に回る方法がある。

  • 組織改善を推進するマネージャーやPdMと協働し、現場の声を翻訳・提案する
  • ワークショップや共創の場でファシリテーションや観察役に回る
  • 変革のアイデアを「小さく試す」プロトタイプ実験を主導する

これは「チームの影の力持ち」として、変革の種を撒く重要な存在である。

4. 「実践知」を言語化・可視化する

私がプレイヤーとして経験してきたことを、チームや他者に伝えられる形にすることは、非常に価値がある。

  • UI設計やUX改善のナレッジをドキュメント化
  • プロジェクトの学びを事例として社内にシェア
  • 後輩やチームへのアドバイスを「チェックリスト化」する

これにより、自分のプレイングがチーム全体の財産になる。これは一種の「間接的なマネジメント」と言える。

私が目指せる姿

前に立つリーダーよりも、後ろからチームを押し上げるような存在。それが私らしさであり、今後ますます求められる役割であると信じたい。

  • シニアデザイナー / プリンシパルデザイナー
  • デザインエヴァンジェリスト / プロセスアーキテクト
  • メンタリング型リーダー
  • 仕組みづくりと支援で動く変革パートナー

「前に出るタイプではない」としても、こうしたチームの基盤を整える動きこそ、これからの時代の「静かなリーダーシップ」である。そして、それはチームにとってかけがえのない役割と言える。

静かなリーダーシップとは

「前面に出るタイプではなく、支援・改善をしたい」のであれば、“静かなリーダーシップ” はとても有効的。

通常のリーダー静かなリーダー
指示を出す気づきを促す
会議で引っ張るドキュメントで調整する
ゴールを声高に掲げる日常の行動で信頼を築く

静かなリーダーシップでできるネクストアクションは以下の通り。

アクション目的
自分の作業意図や仮説をSlackやFigmaで軽く共有認知のズレや誤解を防ぐ/思考プロセスが見えることで信頼感UP
自分なりの「作業ガイド」「仕様メモ」などをNotionに小さく作成属人化を避けつつ、仕組み化のきっかけを作れる
会話で「それって◯◯という課題が背景ですか?」と確認する受け身でなく“構造的な理解”を持っている人と認識される

静かなリーダーシップの実践シート

概要

項目内容
🎯 目的・職位に関係なく「信頼されるキーマン」になる・議論やプロジェクトを“整え”、前に進める力になる
👤 対象・チームを支えるのが得意な人・空気を壊さずに変化を起こしたい人・業務委託など立場的に発言権が限られている人
🧭 「観察力」×「仮説」×「整理力」= 静かに響く影響力

構成例

関係性構築のアクションチェック

状況実践アクションチェック
会話が少ないSlackのスレで「◯◯という意図ですか?」と軽く確認・深掘り
他職種が困っていそう「少し整理してみたので共有しますね」とNotionでまとめ投稿
自分の意見を伝えたい「一案ですが、〜という仮説でこう考えてみました」と添えて発信

デザインの価値を“届ける”アプローチ

課題実践アクションチェック
UIの優先度が低い小さな改善を実装ベースでFigmaに提案+「改善ログ」にまとめる
PdMの意思決定が偏るスプリントのリファインメントで「このケース、AとBどちらに寄せますか?」と問いを投げる
UX課題が見過ごされる「現時点では支障ないと思いますが、将来的にこういうリスクもあります」と補足する

3. チーム文化に“静かに効く”習慣づくり

状況実践アクションチェック
横の共有がない自分の進め方・設計意図を毎週Notionに軽くメモ(見たい人だけ見ればよいスタイル)
チームの声が見えない「最近、◯◯について困ってる人いませんか?」とゆるく投げてみる
意見がぶつかりやすいファシリ時に「今それぞれの立場でどう見えてますか?」と状況の見える化から始める

使い方の例

  • 自分で週1回ふりかえる:「今週はこういう“支える行動”ができたか?」
  • チーム改善の相談をされたときに、行動のヒントとして使う
  • 新しいチームに入った時の「初動で信頼されるための指針」として使う

静かなリーダーシップの実践シート(現場リソースが限られる編)

目的

  • 正社員やPdMほどの権限はなくても、プロダクト改善に“静かに効く存在”になる
  • 自分の立場で最大限できる工夫を積み重ね、信頼を蓄積する
  • 徐々に「この人に聞いた方がいい」「関わってほしい」と思わせる立場に変化させる

静かなリーダーシップ実践アクション

リソース不足時の“提案の仕方”を変える

状況実践アクション補足
ミニマムでの解決しか受け入れられないFigmaで「MVP案」「UX最適案」の2パターンを出す二段階の選択肢を見せることで、提案の意図と理想をセットで提示
PdMがワイヤーフレームを作ってしまう「元の意図をくみ取って、こう整理してみました」とブラッシュアップ版を作るPdMの意見を否定せず、プロの視点で整え返す
「今は実装無理そう」と言われるNotionに「将来的に検討したい改善アイデア」として軽くストック無理に通さず、アイデア管理だけしておくことで機が熟すまで待てる

エンジニアやPdMに「頼られる存在」になるための静かな工夫

課題実践アクション補足
UIUXへの理解が浅いFigmaファイルに注釈コメントを丁寧に残す(Whyベースで)見た目ではなく意図を伝えることで信頼感が高まる
要件がふわっとしているSlackで「これは◯◯と△△どちら寄りですか?」など、選択肢ベースで整理相手が考えやすくなり、設計を“共同”で進められる
意見を聞いてもらえない「参考ですが…」とNotionやSlackでナレッジ共有(成功事例・UXリサーチ)押し付けず、共有するスタイルで信頼を構築

チームとの“薄くても効く”横のつながり

状況実践アクション補足
デザインチームが個人主義自分の進め方やtipsをNotionで週1記録・共有見たい人が見るだけの形式で気楽に続ける
コミュニケーション不足Slackの投稿に対して「いいね」だけでも反応し、軽く流れを拾う絡みすぎず、観察しつつ存在感を出す
実績が社内に伝わりにくい月1で「改善されたUIのBefore→After」をNotionで共有(小さくても)見える化することで、貢献度がじわじわと伝わる

一週間の軽やかな実践スケジュール(例)

曜日アクション例
リファインメントで「意図を確認する質問」+MVP案と理想案を出し分け
Figma注釈やコメントに「Why」を追記/Slackで軽く観察
Notionの「改善ログ」に1件アップ(スクショあり)
チームの投稿に反応/ちょっとしたリサーチ記事をSlackに共有
1週間の気づきをNotionにまとめ(自分のためでもOK)

ゴールイメージ

  • 「この人がいると、なんかプロジェクトが整う」と思われる存在
  • 意見は押しつけず、でも“頼られ始める”
  • 裏方っぽい立ち回りなのに、なぜか意思決定に巻き込まれていく

自分のやり方やノウハウを伝えるコツ3原則

① 「パターン」で語る:属人性を薄める

② 「問い」で伝える:共感と発見を生む

③ 「定点」で出す:見に来てもらえる形にする

原則①「パターンで語る」〜人に伝わる“型化”〜

やり方を抽象化して「使いまわせる知恵」にする。具体 → 抽象 → 汎用化、という流れがコツ。

例)「タスクの優先度が見えづらいとき、どうしていますか?」と聞かれたら
👉 こう伝えると伝わりやすい:

状況整理→選択肢整理→意思確認の3ステップで進めていく。
Notionで「目的」と「制約」を先に書き出してから、A案・B案を簡単に可視化 → SlackでPdMに方向性を確認してから着手、という流れですね。

こうすることで「自分のやり方」→「誰にでも応用できるパターン」に変わり、価値が伝わりやすくなる。

原則②「問いで伝える」〜一方通行にしない〜

あえて「提案」や「正解」ではなく、問いを共有する。

例)Slackでノウハウを共有するとき

最近Figmaファイルを複数人で編集するときに、
・「仕様としてどこまで明記すべきか」
・「注釈は多い方がよいのか、少ない方がわかりやすいのか」
悩む場面がありました。

私は最近こうしてます →(やり方簡単に共有)
皆さんどうしてますか?考え方などあれば聞いてみたいです〜

👉問いをベースにすると、他人にとって“余白がある”情報になり、返信もしやすくなる。

原則③「定点で出す」〜続けられる仕組み化〜

毎週○曜日に「共有ログ」をNotionに書く/Slackに1行メモ投稿する
 →「見る人が決まっていなくても、発信している」というスタンスが信頼に変わる。

例)Notionでこんなテンプレを使うと続けやすい:

📌 今週の気づきログ(5/13週)

🎯 問題:ボタンの配置をどう最適化するか迷った
🔍 やったこと:クリック率・ユーザーの視線調査を確認
💡 決めた基準:スマホでは「親指領域」を優先、PCでは視線導線を優先
📘 補足:調査リンク貼付

伝える技術テンプレート

タイプ伝え方メリット
型で伝える「私は◯◯→△△→□□の流れでやっています」汎用化・真似しやすい
問いで伝える「皆さんはこういうときどうしてますか?」返答を引き出しやすい
定点で発信「今週はこういう気づきがありました」継続性・信頼性が出る

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