デザイナーが関わるPoCフェーズでの価値提供とは

デザイナーが関わるPoCフェーズでの価値提供とは AI

はじめに

AIや業務自動化サービスの開発において、PoC(Proof of Concept)=概念実証フェーズは、「このアイデアに価値があるのか」を判断する重要なステップです。この段階では、技術的な実現可能性に目が向きがちですが、ユーザーにとって意味がある体験かどうかを見極める視点も、同じくらい重要です。

本記事では、UXデザイナーがPoCフェーズで発揮できる価値について述べています。

PoCとは何か、そしてなぜUXが重要なのか

PoCは、新しい技術や仕組みの有効性や可能性を検証するための初期検証フェーズです。特に生成AIや自動化の領域では、技術は進化していても、「それが本当に役立つのか?」という問いには、ユーザー接点を通じた検証が不可欠です。

技術が「できる」ことと、体験として「使いたい」と思われることには、大きなギャップがあります。そのギャップを埋めるのが、PoC段階におけるデザイナーの役割です。

デザイナーが担える主な価値提供領域

1. 仮説の構造化と言語化

PoCはアイデアベースで始まることが多く、仮説が曖昧なまま進行するケースもあります。デザイナーは、「どんな課題を、誰に、どう解決するのか」を整理し、図や言葉で見える化する役割を担えます。

  • ペルソナやジョブ(Jobs to be Done)の定義
  • 検証したい価値仮説の構造化
  • 成功指標(例:時間削減、精度向上)の見える化

2. 体験の可視化とプロトタイピング

PoCでは、実際の画面や動作がまだ整っていないことが多いですが、デザイナーがFigmaやMiroなどを使って「体験の流れ」を早期に形にすることで、チームの認識を揃えたり、ユーザー検証をスムーズに進めたりすることができます。

  • ストーリーボード、画面遷移図、ペーパープロトタイプ
  • ユーザーがどこで驚き、どこで困るかを先回りして提示

3. 簡易ユーザー検証の設計と実施

PoC段階では本格的なユーザビリティテストは難しいことが多いですが、その中でもインタビューや簡易テストで反応を拾うことは可能です。

  • 使用シナリオを元にした仮想操作のフィードバック収集
  • 「操作させる前後で、印象がどう変わったか」を記録
  • 複数職種からのヒアリングでバイアスを排除

価値を定量化する視点を持つ

PoCでありがちな失敗は、「いい反応だった気がする」で終わってしまうことです。デザイナーは、体験の質を定性的に捉えつつ、定量的指標で補完する視点を持つことで、説得力のある成果に変換できます。

  • Before / Afterの業務フローで時間や負担の変化を可視化
  • ユーザー満足度スコア(SUS)などの簡易指標を活用
  • 成果を一枚の図にまとめて、報告書化する

チーム内でのデザイナーの立ち回り方

PoCフェーズは変化が早く、決まっていないことも多いため、デザイナーが「正解を出す人」ではなく、「問いを引き出す人」になることが効果的です。

  • 「なぜそれをやりたいのか?」を掘り下げる問いかけ
  • 「この仮説が正しければ、どんな行動が見られる?」という視点提示
  • 「ユーザーから見て、これはどう見える?」という視点の持ち込み

こうしたスタンスが、PoCを単なる技術検証ではなく、ユーザー起点の価値検証へと導いていきます。

おわりに(まとめ)

PoCフェーズにおけるデザイナーの関与は、単に画面を作ることではありません。まだ形になっていないアイデアに、「問い」「構造」「体験」を与え、検証可能な形に整えることが、デザイナーが提供できる最大の価値です。アイデアが芽吹く前の不確実な時期だからこそ、UXデザインの視点が「進むべき方向性の地図」として機能します。

PoCは短期的な成果ではなく、長期的な信頼の布石でもあります。デザイナーの力で、検証をより意味あるものに変えていきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました