はじめに
API設計と聞くと、エンジニアが担う領域だと感じる方も多いかもしれません。しかし実際には、APIの構造や設計の仕方が、UIやUXに大きく影響することがあります。特に、生成AIや業務自動化系のプロダクトでは、データの取得・送信・加工の流れがユーザー体験に直結します。
本記事では、UXデザイナーがAPI設計にどのような視点でフィードバックできるかを、具体的な例を交えて紹介していきます。
なぜUXデザイナーがAPI設計に関わるべきか?
UXデザイナーがAPI設計に関与することで、以下のようなメリットがあります。
- UIに反映しづらいデータ形式や構造を事前に避けられる
- ユーザー操作とデータ処理のタイミングを整えられる
- エラーハンドリングやステータス設計がUXに配慮されたものになる
APIは、UIとバックエンドをつなぐ「橋」のようなものです。橋が整備されていなければ、ユーザーに滑らかな体験は届けられません。
フィードバックのポイント例
以下に、UX観点でよくあるAPI設計へのフィードバック例を紹介します。
1. レスポンスのタイミングが遅い
問題:ユーザーが操作してから結果が返るまで数秒かかる
フィードバック:「レスポンスが遅い操作は非同期処理にできませんか?UI上はローディング表示+完了通知で補完できます」
UXでは「待たされている」体験をどう設計するかが重要です。処理の重さをUIでどこまで吸収できるか、API側でも調整可能かを議論します。
2. 不必要な情報が大量に返ってくる
問題:UIで使わないデータが大量に含まれていて、パフォーマンスに影響
フィードバック:「このエンドポイントでは必要な情報に限定してレスポンスを絞れませんか?」
デザイン上では「必要最小限でわかりやすい情報表示」が基本です。同様に、APIも「UIに最適化されたデータ構造」であると、設計もシンプルになります。
3. ステータスの定義が曖昧
問題:APIレスポンスの中にある「status」が数字で返ってきて意味が不明
フィードバック:「status=2が何を意味するのか明示されていないため、UIでの表示文言設計が難しいです。ステータスは定義を共有してもらえますか?」
UIではユーザーに「今どういう状態なのか」を明確に伝える必要があります。API側で状態が分かりやすく定義されていないと、UXの品質も落ちてしまいます。
4. エラーメッセージが技術的すぎる
問題:APIから返るエラーが「Error: 500 – Internal Server Error」など、ユーザーには理解できない
フィードバック:「エラーメッセージは、UIでユーザー向けの文言に変換できるよう、分類やコード体系を整理してもらえますか?」
ユーザーにとっての“わかりやすさ”は、エラー対応時に最も重要です。UX設計者が関与することで、ユーザー向けのエラーメッセージ設計がしやすくなります。
フィードバックを行うための準備とコツ
UX観点のフィードバックをスムーズに行うには、次のような準備と習慣が有効です。
- API仕様書(OpenAPIなど)を読む習慣をつける
- エンジニアと一緒にPostmanなどでAPIを試す
- Figmaなどのデザインツールに「データの流れ」を図示する
- フィードバックをNotionやGitHubのコメントに書き残す
UX視点からの改善は、開発後よりも設計段階の方がコストが小さいため、早い段階で関与することが大きな価値につながります。
おわりに(まとめ)
API設計にUXデザイナーが関わることは、プロダクト全体の完成度を上げるために欠かせない取り組みです。ユーザーの視点を技術に落とし込む役割として、UXデザイナーが積極的に意見を出すことで、「見えない体験」の質を底上げすることができます。
完璧な理解ではなくても、「ユーザーにとってどう見えるか」という観点で、API設計にフィードバックを加えていく姿勢が、チームの技術と体験の橋渡しになるはずです。
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