はじめに
AIエージェントや業務自動化ツールを導入する際、多くの企業が最初に直面するのが、「そもそも今の業務がどうなっているのか分からない」という状態です。業務が属人化していたり、口頭でしか伝わっていなかったりする場合、自動化やAI導入の設計自体が曖昧なまま進んでしまい、期待した効果が出ないこともあります。
そこで重要になるのが、業務フローの可視化です。この記事では、UXデザイナーがMiroを使って業務プロセスを可視化し、AI導入を支援する方法について紹介します。
なぜ業務フローの可視化が必要なのか?
AIやRPAなどのツールは、基本的に定型的で再現性のある業務に適用するものです。しかし、現場では「何となく手が動いている」ような作業も多く、どこからが手動で、どこからがルールに従っているのかが不明確なことがよくあります。そのため、導入前に次のような目的で業務の可視化作業が必要になります。
- ボトルネックの発見:どこで時間がかかっているのか
- 属人化の解消:誰にしかできない作業がどこにあるのか
- 自動化対象の明確化:どの業務がAIで代替可能か
- 現場との共通認識の形成:プロセスに対する解釈のずれを解消する
UXデザイナーは、ユーザー体験を構造化するスキルを活かして、この可視化支援に貢献できます。
Miroを使うメリットと使い方
Miroは、オンラインで共同編集できるホワイトボードツールであり、業務フローの可視化において、以下の点で非常に優れた機能を持っています。
メリット
- 非エンジニアでも扱いやすいUI
- 図解テンプレートが豊富(フローチャート、カスタマージャーニーなど)
- リアルタイムで複数人が編集可能
- コメント・付箋によるフィードバックがしやすい
- ZoomやTeamsとの連携が可能で、リモートワークに最適
基本的な使い方
- 業務単位をポストイットで洗い出す
例:「請求書の確認」「メール返信」「社内承認」など - 流れを線でつなぎ、依存関係を表現する
業務の順序、並列性、条件分岐を可視化 - 誰がどこで何をしているかを色分けする
担当部署や役割ごとに色分けし、属人化を見つけやすくする - 自動化可能な領域をラベルで明示する
「AI対応候補」「RPA対象」など、ツール適用の見立てを記載
よく使うテンプレート例
以下は、MiroでAI導入支援に使いやすいテンプレート例です。
1. 業務フローチャートテンプレート
- 業務の手順を図式化し、「開始→処理→判断→終了」の流れを明確にする
- 条件分岐や例外処理も含めて構造化できる
2. 業務棚卸しマトリクス
- 横軸に「重要度」、縦軸に「繰り返し頻度」などを取って、自動化の優先度を可視化できるマトリクス形式
3. カスタマージャーニーマップとの併用
- 顧客体験と業務プロセスを横断的に整理し、UX改善と業務改善を同時に検討できる
AI導入支援へのつなげ方
業務可視化ができたら、次は自動化対象の特定と導入ステップの検討です。UXデザイナーとしては、以下のような点でプロジェクトに貢献できます。
- 自動化対象の業務を、ユーザー目線で優先順位付けする
- 人とAIの分担を体験設計の観点から提案する
- 「導入して終わり」ではなく、継続的に使われる仕組みを考える
また、ビジュアル化されたMiroボードは、そのまま社内説明資料や経営層への提案資料にも転用可能です。「わかりやすく整理されている」というだけで、プロジェクトが前に進むケースも少なくありません。
おわりに(まとめ)
AI導入の第一歩は、「何を変えるべきかを知ること」です。そのためには、業務プロセスをただ文章で書き起こすのではなく、チーム全員で可視化しながら考える場づくりが重要になります。
UXデザイナーがMiroを使ってファシリテーションし、「現場のリアルな業務」と「AI導入後の理想の体験」のギャップを埋めていくことで、単なる導入支援にとどまらない、継続的な価値提供の土台が築けるはずです。
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