AIサービス開発にデザイナーが関わるべき理由〜技術ドリブンの現場に人間らしさを〜

AIサービス開発にデザイナーが関わるべき理由〜技術ドリブンの現場に人間らしさを〜 AI

はじめに

「AIのことはエンジニアに任せておけばいい」──本当にそうでしょうか?

AI技術は日々進化し、社内外の多くのプロジェクトに組み込まれるようになりました。しかし、その導入プロセスは「技術主導で進みがち」という傾向があります。結果として、「なんだか使いにくい」「ユーザーが定着しない」といった課題に直面するケースも少なくありません。この状況を変えるために必要なのが、UXデザイナーの介在です。

この記事では、私自身の現場経験をもとに、「なぜAI導入プロジェクトにUXデザイナーが不可欠なのか?」を、実践に即して整理していきます。

よくある誤解:「AIは裏側の技術だから、UIだけでいい」

「AIはブラックボックス」「プロンプトと出力があるだけだからUIの出番は少ない」と思われがちですが、実際には“体験の設計”そのものが必要な領域です。

たとえば:

  • 出力結果がどう生成されたか、ユーザーにどう伝える?
  • AIの誤答や不正確さに、どんな導線でリカバリさせる?
  • プロンプトに何を書くべきか、誰が分かるようにする?

こうした設問の一つひとつにUXが関わっており、むしろ「見えにくいからこそデザインすべきポイント」が多いのがAIプロジェクトです。

デザイナーが果たせる役割とは?

AIプロジェクトにおいて、UXデザイナーが持ち込める価値は多岐にわたります。以下に、実務で実感した役割を整理します。

ユーザー視点を技術に翻訳する

AI技術は多機能で柔軟ですが、「どう使われるか?」の視点がないと、機能過多・混乱のもとになります。UXデザイナーは、ユーザーのニーズや習慣をベースに、技術の“かたち”を整える通訳のような存在です。

プロンプト設計・フロー設計に貢献する

AIの振る舞いは、「プロンプト」「状態管理」「フロー設計」によってコントロールされます。
UXデザイナーは、これらの設計において、

  • 誤解が生じない表現設計
  • 対話パターンやトーンの整合性設計
  • タスクの流れが自然になる構成

といった点において、非常に強い感度を発揮できます。

AIと「共に働く体験」を設計する

AIエージェントは単なる自動応答装置ではなく、「ユーザーの業務を支援する共演者」です。ユーザーがその存在に違和感を持たず、自然に使いこなせるようにするには、

  • AIとの役割分担
  • ユーザーの主導感を残すUI
  • ミス時の再設計導線

といった、「人間との関係性」を設計する視点が不可欠です。これは、まさにデザインの本質=人間中心設計に他なりません。

現場で起こる「デザイナー不在」によるギャップ

過去に、デザイナーが関与しないまま進められたAIプロジェクトでは、以下のような課題が頻出しました。

  • 出力の意味が分からない(誰向け?どの文脈?)
  • 自動化されたプロセスに「気づかず」にミス
  • UIが汎用的すぎて、自分ごと化されない体験

どれもUX設計で防げる問題ばかりです。逆に言えば、初期段階から関わることで防げる「もったいない失敗」が数多く存在します。

導入初期から関わるべき理由

UXデザイナーがプロジェクト初期から関与することが鍵となるのは以下のような理由です。

フェーズUX視点の貢献例
要件定義ユーザーの業務理解・課題抽出、価値仮説の整理
PoC設計試験導入時の「使える感」を演出するUI/UX設計
プロンプト開発出力結果とプロンプトの往復試行への協力
評価・改善定量指標+定性ヒアリングによる改善提案

とくにPoC段階ではどこまで自動化し、どこを人が担うかという線引きがUXで左右されるため、早期関与がプロダクトの質を決定付けると言っても過言ではありません。

おわりに(まとめ)

AI導入プロジェクトにおいて、デザイナーは単にUIを整える人ではなく、人とAIの橋をかける存在です。私自身、AIとの共創の現場に身を置くことで、あらためて「UXデザインの力は、技術のその先にある」と感じています。

  • 「技術はできる」だけでは、ユーザーに届かない
  • UXは「人が信頼できる体験」をかたちにする
  • デザイナーがいることで、AIは「使える」存在になる

こういったポイントを意識しながらUX設計を行なっていく必要があります。

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