はじめに
生成AIの活用が広がるなかで、プロンプト設計(Prompt Engineering)の重要性が高まっています。ChatGPTをはじめとする対話型AIは、使い方ひとつでアウトプットの質が大きく変わるため、「誰がどう使うか」がサービス体験に直結します。そのため、プロンプト設計は個人スキルだけで完結させるのではなく、チームでナレッジを共有しながら設計・改善していくべき対象になりつつあります。
本記事では、ChatGPTを使ったプロンプト設計の「共同作業」の進め方について、UXデザイナーの視点から紹介します。
なぜプロンプト設計をチームで行うのか?
AI活用の現場では、以下のような問題が起こりがちです。
- プロンプトが属人化してしまい、再利用・改善ができない
- なぜそのプロンプトでうまくいったのかが、説明されていない
- UIやUXとの整合が取れていないまま、本番導入されている
これらを防ぐために、プロンプトを「仕様書」や「デザインの一部」として扱う視点が必要になります。そして、誰でも見て、理解して、改善できるようにすることで、プロダクトの一貫性や改善スピードが向上します。
ChatGPTを使った共同作業の進め方
ステップ1:目的と役割を明確にする
まず、プロンプトが「何のために」「どんな文脈で」使われるかを明示します。
- 例:社内FAQボットの応答プロンプト
- 目的:問い合わせ削減と正確な回答提供
- 想定ユーザー:社内の営業チーム
このように利用シーンを文脈とともに記録することが、後の改善に役立ちます。
ステップ2:試作プロンプトをChatGPTで作成・検証する
ChatGPTを使って初期案を作成し、以下のようなパターン検証を行います。
- 出力の形式が安定しているか?
- 誤解されやすい入力にどう反応するか?
- ユーザーの誤入力にも柔軟に対応できるか?
- 回答に自信ありげすぎる表現がないか?
実際のユーザー目線で「何度も試す」ことが、共同設計の第一歩です。
ステップ3:Notionやドキュメントにナレッジとして残す
- 成果が出たプロンプト例(Before / After)
- 修正理由、失敗例、検証ログ
- 「○○系の目的にはこのテンプレ」という再利用の仕組み化
プロンプトの設計は、改善履歴を残していくことで精度が上がります。
デザイナーが関わる意義とは?
プロンプト設計というとテキストの話に思えるかもしれませんが、その実態はユーザーの期待と、AIの出力を橋渡しするインタラクション設計です。
たとえば:
- 「どんな口調で答えるか」「どれだけ例を出すか」はトーン&マナーの設計
- 「どの情報を明示し、どこを省略するか」は情報設計
- 「ユーザーが求めている出力形式に合っているか」はユーザビリティ
これらはまさに、デザイナーが普段担っている役割そのものです。
さらに、ユーザーの入力パターンや誤解も想定したプロンプトの分岐や調整案は、デザイナーのリサーチスキルや観察力が活かされるポイントでもあります。
チームでの実践事例:共有 → 改善 → ナレッジ化
以下のような流れで、プロンプト設計を継続的にチーム活動として進めることができます。
- 毎週1回、プロンプトレビュー会を実施
- ChatGPT上での改善案のブレスト → 実装
- 良かったものは「プロンプトライブラリ」に登録
- Notionでプロンプト設計のTipsやFAQをナレッジ化
プロンプトは日々の使用の中で磨かれていきます。それゆえに、「共有して、使って、改善する」サイクルを組織で持つことが重要です。
おわりに(まとめ)
プロンプト設計はもはや、特定の個人だけが扱うテキスト作業ではありません。それは、体験の一部を設計するデザイナーの仕事であり、チームで育てていくべき知的資産です。
ChatGPTはその設計作業を手助けしてくれる、優秀な共同作業パートナーであると言えます。小さな実験から始めて、プロダクトに合った最適なプロンプト設計をチーム全体で探っていくことが大切です。
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